FUJIFILM X100F。
2017年2月に発売された、富士フイルムの高級コンパクトカメラ。
既に後継機種の「X100V」が2020年2月に発売されている。
…なぜ今更このカメラを話題に出したのか。
ここ数ヶ月間、時勢のせいもあって写欲が減退気味だ。どこへ行っても角が立ちそうだし、かと言って自然風景にそんなに興味ないし…。
そんな時に、暇つぶしにLightroomのアルバムを眺めていて、今思えば最も自然体で楽しく写真を撮影できたのは、X100Fを持ってブラブラと東京を歩いていた時だったなーと、漠然と思い出したのだ。
東京の街を、あのカメラを首に下げて歩くのが好きだった。
ちなみにX100Fは、2017年9月に新宿マップカメラ本店で購入して東京の街を撮り歩いた後、2020年2月に売却した。
あれ、そもそもなぜ手放したんだっけ…?
そうだあれだ、Lからはじまるメーカーのカメラを買う時に、できるだけ負担を減らすために手放したんだった。
…前にも書いたけど、カメラ機材の「下取り交換」は悪習だ。
まだまだ必要な機材や気に入って使っていたはずの機材まで、一時の物欲に浮かされて盲目的に「軍資金」にしてしまう。
さらに「その機材が必要かどうか」吟味することなく、「まあ、不要になったら売れば良いや」と安易な購入の引き金になる。
X100Fも、そうやって犠牲になった不遇のカメラだった。
そんなわけで(?)今回はFUJIFILM X100Fというカメラについて振り返ってみようと思う。
旧型「FUJINON 23mmF2」レンズ
まずは、初代X100から4代目X100Fまで採用されていた「FUJINON 23mmF2(旧)」について。
諸説あるので、ここではPY(フォトヨドバシ)発行の「富士フイルム X&Gマウントレンズ 完全レビューブック」の記述を引用する。
被写体を包み込む優しい描写、その場の光を余さず再現するナチュラルな色表現。
デジタルフォトグラフィーの世界に一石を投じる
開放の写りがとても心地良い
被写体を包み込むような美しい滲みと柔らかで優しい光。
決して派手ではなく、それでいて濁りのない色。
シャープネス・コントラスト至上主義の対極
設計者が「意図的に収差を残した」
このカメラでどんなシーンを写したいかと言うことを考え抜いて、このようなレンズを設計した
目で見たものを超えて、心が感じたものを写真として見せてくれるこのレンズは、今なお色褪せることなく魅力的な存在。
記憶の中にある光景をきちんと描いてくれる
富士フイルム X&Gマウントレンズ 完全レビューブック より
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要約すると、FUJINON 23mmF2は「意図的に収差を残して設計されたクセ玉」。
特に開放付近での近接撮影時にソフトフォーカスのような滲みが発生するのが特長。
「このレンズで撮りたい」と思わせる、積極的に選ぶ価値のある、個性あるレンズ。
一方で、「開放からシャープに撮影したい」という人にはあまり向いていないレンズだと言えるかもしれない。撮る人を選ぶというのだろうか。
レンズに振り回されたい人、開放からシャープに写るレンズに飽きている人にはうってつけだと思う。
立体感
コンパクトカメラが苦手とする、ボケによる立体感。
APS-Cサイズのセンサー「X-Trans CMOS III」と、開放絞りF2レンズというスペックにより、コンパクトカメラながらも説得力のある立体感を出すことができる。
加えて先ほどレンズのところで言及した独特のソフトフォーカスのような滲みが質感を優しくすることで、全体的にふわっとした仕上がり(語彙力)にしてくれる。
23mm(35mm判換算35mm)というのはどちらかといえば広角レンズなのでボケ描写は苦手なのだが、このレンズは及第点の立体感を感じられる。
シリーズ共通の操作性
当時発売されていた「X-Pro2」「X-T2」とほぼ共通のスペック。
レンズの個性の違いはあるが、おおむねどのカメラで撮っても同等クオリティの撮影結果が得られる。
また、操作性もXシリーズ内でほぼ同じだった。
何よりこの世代のXシリーズは操作性が完成されていた(過去形)ので、非常に使いやすかった。
ほぼノーストレス。カメラにおいて操作性は非常に大事。
フィルムシミュレーション「ACROS」
ACROS。
モノクロフィルムの名を冠したこのフィルムシミュレーションの存在が、私がXシリーズを選んだ理由、と言っても過言ではない。
モノクロ好きにはたまらない。
…このフィルムシミュレーションの詳しい説明は前に記事にしたのでそちらをどうぞ。
要約すると、中間層の階調性に優れたモノクロ。…間違ってたらすまん。
なお、このフィルムシミュレーションが使えるのX100シリーズは、X100FとX100Vのみ。
クラシッククローム
クラシッククロームは割と初期に追加されたフィルムシミュレーション。私は基本的にこのクラシッククロームとACROSを好んで使用する。
建物・オブジェクトをクールに撮るという用途ではなく、街の雰囲気をドキュメンタリータッチで伝える写真を撮りたい時に使う。
このフィルムシミュレーションについても以前記事にしているので、詳しいことを知りたい方はそちらをどうぞ。
自分史上、最も人物を撮影したカメラ
旅行中の撮影を除けば、このカメラが「もっとも人物を撮影したカメラ」ということになる。
街中で人物写真を(さりげなく)撮る秘訣は「気付かれないこと」。
リーフシャッターと(比較的)小型なカメラは、「写真撮ってます」オーラを極限まで減らすことができる。
そう言う意味ではGR Ⅲがステルス性で言えば一番なのだが、このカメラで人物を狙うとなんか本気の隠し撮り(犯罪)のような気がしてやってない。…いや、この辺は微妙な、個人的な感じ方なのかもしれないけど。
作例(多め)
以下、購入から撮影してきた写真をちょっと多めに掲載している。
X100Fの描写サンプルとして、(いまさら)購入するかどうかの参考していただければ幸いである。
顛末と再生
東京から離れる直前2020年2月に、このカメラとさよならした。
…だがその後、喪失感に耐えかねて2020年10月にX100Vを購入、2020年12月にすぐ売却、という暴走事件を起こすことになる。
誤解しないで欲しいのは、私は別にX100Vは悪いカメラではない。むしろ最新のX100シリーズとして、もっとも洗練されたカメラだと思う。
「これから購入したい!」という人がいたとしたら、手放しでお勧めできる。
ただ個人的には購入当初から、アップデートされた新レンズ「FUJINON 23mmF2 Ⅱ」に旧レンズほどの愛着が持てなかったこと、十字キーを省略したことによる操作性の違和感など、小さな「不満とも言えないようなモヤモヤ」があったのは確かだった。
そんなところに、「GR Ⅲが欲しい病」が発症。
冒頭でも書いたが、このとき、購入時に支払った価格を思い返すこともなく、「生贄に差し出せる」と安易に考えてしまった。
色々な事情があっての早期売却となった。
そして、私とX100シリーズの物語は終わった…はずだった。
2021年3月。
見つけてしまった。
ヤマダ電機のアウトレット売場に鎮座する「展示品1品限り」のX100Fを。
だから私は悪くない。…いや悪い。非常に悪質だ。ごめんなさい。
もう一度、東京を撮り歩いていたあの頃の感覚を取り戻したい。あの時の純粋な楽しい気持ちを感じたい。そんなふうに思ってしまったのだ。
気が付いたら、小汚い箱(アウトレットなので保存状態最悪の箱)を持って帰ってきていた。シャッター回数を調べてみたら0回だった。
…やったぜ。
やったぜぇぇ…!!
というわけで、かなりお早めの富士フイルム復帰となった。ただいま。
それにしても、カメラ増えたなー…
YMさん
不治の病、ご同情申し上げます。老生もNikonに浮気して高い治療費を払って、またXの世界戻って来ました。
しかしMapカメラは悪くないですが、、、欲しいものがある時、あの先取り交換って麻薬ですね、、、
コメントに気づかず、返信が遅くなってしまいました…ごめんなさい!
富士フイルムに戻ってまいりました。またよろしくお願いします。
下取り交換というシステムそのものは購入時とてもありがたいんですけど、支払額を誤認させる効果があるのと、手持ちの機材を過小評価するきっかけになってしまうんですよね…
欲しいものがある時は冷静に考えたいですね…
はじめまして。
カメラ機材の「下取り交換」は悪習
私もその一人です 笑
一度新品でX100Fを購入し、富士の色に魅了され、常に鞄に入れて家族の思い出を撮り続けました。しかしフルサイズのボケが忘れられず、X100Fを「生贄」に 笑、中古の6Dと35mmf2のジーコレンズを購入しました。キヤノンの色、特に忠実設定でコントラストを少し下げた色味とフルサイズ35mmf2の開放ボケ、非常に好みの色を出してくれました。
しかしながら、常に鞄に入れて持ち運ぶ事は出来ず、持ち出す時は鞄とカメラバッグというスタイル、億劫になり写真もスマホが多くなってしまいました。
3年ほど6Dを使っていましたが、やはり常に持ち出して写真を撮りたいという気持ちがわいてきて、またまた6Dとレンズを「生贄」に中古のX100F、それも同じ色を再び購入してしまいました。X100Vは純正ケースの使い勝手が悪いとの評判もありやめました。
いつか再び迎え入れる?との思いから純正のケース、フード、フィルターは取っておきました。
私の使い方はX100Fじゃないとダメみたいです。
noriiさん、コメントありがとうございます!
ここ最近は「安易に売らない」を実践しているからか、機材の出入りが激減しています。
…いや嘘です。撮るものがないのと、撮るモチベーションが薄れているからです。
機材を買うことでモチベーションが戻るなら、むしろなんか買ったほうがいいんじゃないかと思う、今日この頃です。
そう言えば私も、ニコンの一眼レフを打った直後にキヤノンの一眼レフを買い揃えるとかミラクルやってたなぁ…懐かしい…
何はともあれ、X100Fはいいカメラ。もう手放したくないですね…
でもM10-Pも欲しい…
タイトルだけ拝見した時、「え?まさか」と思ったのですが。
・・・・・再発されましたか 笑
また、楽しませてください。
はい、再発しました…。
でも今後は不用意に下取りしないので、あまり増えていかない…はず
たぶん…
いつも楽しく拝見させて頂いております。
実は私もX100F買い戻し組。
何の不満もないのにチルト液晶が付いて防塵防滴だからと
無理やり買い替えの理由を作って100Vに移行したものの
2日間で激しく後悔。
ひとことで言うと写真が冷たい。
特に近接開放でのあの独特の味わいが消えると
これはもうX100のカメラではないと
100Vを早期売却し、100Fを買い戻しました。
ムフフとひとりでほくそ笑む写真が撮れる…
やっぱり100Fじゃないとダメですね。
寿和朗さん、コメントありがとうございます!
X100Fの本当の良さは、失って初めてわかるのかもしれませんね…私も1週間くらいであれ?となりました。
特にこのレンズのクセは「これぞX100の写真」と思わせてくれるので、撮影のテンションにも影響を与えそうです。
でも、X100Vが悪いカメラっていうことは全くないので、好みの問題だと思います。人に勧めるならVが無難だろうし…