X-H1の再レビューから考える、最近の富士フイルムXとZ

今回は久しぶりに富士フイルムのカメラの話をしよう。

私が所有しているXシリーズ「X-H1」の現時点でのレビュー・他機種との比較と、そこから最近のXシリーズへの印象、そして最近一つの流れになっている(ような気がする)、XtoZキャンペーンについて。

雑多な内容になってしまったが、淡々と記事にしてみた。

まずは、X-H1のレビューから。ちなみに今までX-H1については2回ほどレビュー記事を挙げているのでリンクを貼っておく。

カメラ

X-H1とは

LEICA M MONOCHROM (Typ 246) (LEICA SUMMICRON-M f2/50mm (3rd), 50mm, f/6.8, 1/15 sec, ISO500)
X-H1 カメラ外観
LEICA M MONOCHROM (Typ 246) (LEICA SUMMICRON-M f2/50mm (3rd), 50mm, f/3.4, 1/60 sec, ISO500)
X-H1 カメラ外観

X-H1は、2018年3月1日に発売したXシリーズのレンズ交換式カメラ。後継機が出ていないので現在唯一のX-Hシリーズ(?)だ。

X-H1は、当時のXシリーズの「最高性能機」として登場した。発売当時の謳い文句は以下のとおり。

新開発の高剛性・高耐久ボディ、究極の高画質、快適な操作性を実現した「Xシリーズ」最高パフォーマンス機
シリーズで初めてボディ内5軸・最大5.5段(*1)手ブレ補正機能を搭載し、幅広い撮影シーンに対応!

ニュースリリース: 新開発の高剛性・高耐久ボディ、究極の高画質、快適な操作性を実現した「Xシリーズ」最高パフォーマンス機 ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H1」新発売 より

発売から2年以上経過して、今となってはすっかり過去のカメラと化している状況だが、センサー・プロセッサーを除けば、いまだにこのカメラでしか味わえない魅力がある、唯一無二のカメラだ。

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X-H1のいいところ

ボディ内手ブレ補正

Xシリーズといえば単焦点レンズ。でもXの単焦点レンズはほとんどが手ブレ補正が付いていない。そこでX-H1のボディ内手ブレ補正が効いてくる。このカメラがあれば、Xシリーズのほとんどのレンズを手ブレ補正付きで楽しめるというわけだ。この利点は非常に大きい。どんなに画質の良いレンズでも、手ブレしてしまえば台無しだ(意図してブレを使用している作品を除く)。

フェザータッチシャッター

とにかくショックが少なく、音もしない。サイレンサー付きのピストルを想像していただけるとわかりやすいかもしれない(かえってわかりにくい?)。手ブレ防止の役に立つし、静かな屋内での撮影にも向いている。東京で撮り歩いているときに特に恩恵を感じていた。一部の人にはシャッターフィーリングが良くないということで不評。フィーリング?なにそれ美味しいの

持ちやすいグリップ

最近無駄に大型化しているXレンズ。そんなレンズたちでもしっかりと受け止める高剛性ボディと大型のグリップ。逆に最近はX-H1以外のボディだとかなりアンバランスになるレンズが増えてきている印象だ。最近発表されたXF50mmF1.0 R WRとか特にそんな感じがする。X-T4でもかなり大きめに見えるし、なによりホールドしにくそう…。

FUJINON XF50mmF1.0 R WR | Lenses | 富士フイルム Xシリーズ & GFX

逆に小さいパンケーキレンズは似合わない…という意見もあるが、私はあんまりそうは思わない。基本的にX-H1は、XF200mmF2 R LM OIS WRを除くほぼ全てのレンズと相性がいい。デザイン的なマッチングだけではなく、普通に持ちやすいのが最高だ。

3方向チルト液晶モニター

可動式液晶モニターの(ほぼ)完成形だと思っている、3方向チルト液晶モニター。上下だけでなく、右にも開くことで縦位置撮影時もローアングル撮影が可能になる。これを超える機構はペンタックスのフレキシブルチルト式液晶モニターくらいだと思っている。まあ、あちらはかなりボディの厚みが増すみたいだけど。

ここからは個人的な嗜好の話だが、可動式液晶モニターはチルト式が至高。カメラから液晶画面が出っ張るバリアングルはやっぱり好きじゃない。ハンディカムを買ったわけじゃないんだわ…。

X-H1のいまいちなところ

電池の持ちが悪い

すごく電池がもたない。

それはもう引くほどもたない。これは完全なウィークポイントではあるのだが、でも心配いらない。スペアをたくさん持っていればいいのだ。…というわけで、このカメラを使うならスペアバッテリーは必須だ。

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APS-Cセンサーのカメラの中では大きく、重い

フルサイズミラーレスであるSONY α7シリーズよりも大きくて重い

小さければ小さいほど良いわけじゃあないのは承知しているが、それにしてももうひとまわりくらい小さくなってもいいんじゃないだろうか。センサーサイズが小さいのに大きい、というのは正直言って他社と比較して技術力の欠如を指摘されても文句は言えない。

新製品との比較

vs X-T4

X-T4は現在Xシリーズの最新機種。センサーが「X-Trans CMOS 4」、プロセッサーが「X-Processor 4」ということで、最新のものになっている。また、それまでX-H1が唯一搭載していた「ボディ内手ブレ補正」をパワーアップして搭載動画機能も強化した上、バッテリーも大型化。サイズはX-H1よりも小さいという、もはやX-H1の出る幕はないんじゃないかという機種。

ただし、液晶はチルトではなくバリアングル(個人的に嫌い)、グリップはX-H1より浅い。上面のサブモニターはなく、シャッターは従来のX-Tシリーズのシャッターになっている。バリアングル・シャッターは好みがあるので一概にはいえないが、個人的にはこの辺りが致命的なウィークポイントになっている。X-H1からX-T4へ買い替えなかったのはそもそもLEICA M MONOCHROM(Typ246) を購入したこともあるけど、上記が自分には合わなかったからというのが大きい。

あと、個人的にマウントを囲んでサークル型に隆起したデザインが気に食わない。剛性を確保するためにしかたなくやっているのかもしれないが、ペンタ部を不自然にえぐってしまっていて、あれはX-Tらしい雰囲気を壊すデザインだと思う。それとX-Tシリーズは回を重ねるごとに巨大化していっているのが心配。個人的にはX-TシリーズのベストバランスはX-T2の大きさだと思っている。

X-T2(幅)132.5mm×(高さ)91.8mm×(奥行き)49.2mm
X-T4(幅)134.6mm×(高さ)92.8mm×(奥行き)63.8mm

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vs X-Pro3

比べるカメラではないかもしれないけど、X-Pro3とX-H1とでは使い心地に雲泥の差があると思う。前機種のX-Pro2と比べてもX-H1の使い勝手の良さは抜きん出ていた。

具体的には以下のとおり(個人的な感想です)
・グリップしやすい(X-Pro2のグリップは小さい)
・光軸上に大型のファインダー(X-Pro2は右肩)
・大型のレンズがマッチする(X-Pro2は小型の単焦点レンズしか受け付けないデザイン)

X-Pro3との比較となると、ここからさらに以下のメリットがある。
・十字キーがある(X-Pro3では省略された)
・背面液晶がちゃんとある(Hidden LCD笑)

もちろんX-Pro3でしか味わえない魅力というものがある(フィルムカメラライクに撮影ができる、センサー・プロセッサは最新、AF速い、コンパクトな筐体、等)のだろうが、メリットよりもつっこみどころの方が多すぎる。正直言って人におすすめできるカメラではないし、これが売れてしまうと今後の富士フイルムのために良くない(勘違いしちゃう)と思っているので私は買わなかった。

魅力的な製品を作るためにはある程度は遊び要素があっても良いと思うが、このカメラはやりすぎ。
ユーザーは開発者の自己満足や個人的嗜好のはけ口ではない。猛省が必要だ。

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作例

最近の作例を少し。今回はモノクロだけじゃなく、カラー写真も含めて札幌を撮り歩いてみた。

レンズは全て「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」。XFレンズ初の標準ズームで、開放F値が2.8(広角端)であるにもかかわらず非常にコンパクトだ。XFレンズの中でも大のお気に入りレンズだ(3回も買い直してるし)。

それにしても、手ブレ補正がついていることの恩恵は計り知れない。楽チン。

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信号機
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 42.5mm, f/5.6, 1/1250 sec, ISO500)
信号機
横断歩道
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 18mm, f/4, 1/3000 sec, ISO500)
横断歩道
パルコ横
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 55mm, f/4, 1/5400 sec, ISO500)
パルコ横
大通公園
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 34.3mm, f/4, 1/1600 sec, ISO500)
大通公園
北洋
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 18mm, f/4, 1/2500 sec, ISO500)
北洋銀行
交差点
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 35.8mm, f/22, 1/30 sec, ISO800)
交差点
ishiya
X-H1 (XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS, 18mm, f/4, 1/3800 sec, ISO500)
石屋製菓

総評

今、最もお買い得なXシリーズ。

「センサーが旧世代」「AF性能が今のものより低い」「大きい、重い」を許容できるならば、このカメラは現在、最高のコストパフォーマンス機だと思う。

2020/9時点で、中古価格が100,000円前後。この機能性がこの価格で手に入るなんて、いい時代になったものだ。

正直言って、ボディ内手ブレ補正と持ちやすいグリップだけでもその価値はあると考える。

後継機(X-H2?)を待つべきか?

X-H1の後継機は、先日富士フイルムのマネージャーが以下のような発言をしている(らしい)。

  • X-H1後継機について検討している
  • X-H2には「もっと革新的なものが必要」で、「何らかのブレイクスルーを必要としている

これが事実だとするなら、少なくとも今年中の発表・発売はないんじゃないか、と思っている。今の富士フイルム製品に、これ以上の「ブレイクスルー」が起こせるのかどうかわからないが、現時点でそのような兆候がないからだ。

そもそもブレイクスルーってどんなものなのか。ハイレゾショットで鬼連写できるとか、防水性能が付くとか?8K動画が長時間撮れる!とか?動画性能ばかり上げられても、スチル派の私は正直戸惑ってしまうんだけども。

富士フイルムについて

最後に、最近の富士フイルムに関する個人的な感想と、XtoZキャンペーンについて。

最近の富士フイルム

最近の富士フイルムの新製品を見ていると、なにか「迷い」みたいなものを感じる。

・背面十字キーを外してみたり付けてみたり
・チルト液晶にしてみたりバリアングル液晶にしてみたり(隠してみたり)
・35mmフィルムカメラの大きさが最適だと言ってたのにカメラもレンズも巨大化していたり
・日本製を売りにしていたのに急に海外で製造してみたり
・なんか急にNissinのスピードライトに自社名を印字して純正として発売してみたり

なにがやりたくてどうなりたいのか全然伝わってこない。言ったことも守らずに掌返しも非常に多い(ボディ内手ブレ補正、レンズ巨大化、XF33mmF1.0開発中止)。

昔と比べてシステムとして充実しているのは確かなので、「X-Pro1と単焦点レンズ3本の時代が至高」とか言うつもりはないが、黎明期に目指していたものを、もう一回見つめ直したほうがいいんじゃないだろうか。

XtoZキャンペーン…?

最近、富士フイルムXからニコンZへマウント変更している人が急増している気がする(Twitter調べ)。特にZ6が人気なようだ。

強気すぎるZ7の価格設定とシングルスロット記録メディア、カッコ悪いカメラデザインによりスタートダッシュに失敗したZシリーズだが、発売当時から「画質は最高」と言われていたので、レンズが揃いつつある今、じわじわと実力が認められてきたのかもしれない。
あくまでも写真の質で勝負。ニコンらしいといえばらしい気がする。

それにしても、つい1〜2年前は、ニコンFから富士フイルムXへのマウント変更が多く発生していた(私含む)ことを考えると、何とも複雑な気持ちになる。上記の「技術的ブレイクスルー」を起こせず、小手先の仕様変更(劣化)と大型化を繰り返し、コンセプトがフラフラしている富士フイルムXのメッキが剥がれてきた、とも言えるのかもしれないけど。

X-H2が、この流れを払拭する出来になることを祈っている(現状、望みは薄そうだが…)。

まとめ

Zシリーズ、もう少しマシな外見だったら危なかった…。

いや、これも1周回ってかっこいいのかも…?
Z6にダブルスロットになったアップグレード版が出たらワンチャンあるかもしれない!

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あれ?この記事ってX-H1のレビュー記事だよな…?あれ?Z

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4件のコメント

こんばんは!
記事の趣旨としては「<X>を未だ使ってはいるが<Z>が眩しく…」というようなことなのかとも思いましたが、札幌駅周辺や大通辺りで撮影の「X-H1を使って撮った」という画が何れも好い感じで、愉しく拝見しましたよ!
<X-H1>はズームレンズを装着して提げているのが似合いそうな感じですね。そしてそのズームレンズの画角を活かして工夫された、札幌駅周辺や大通辺りでの画が素敵です!私自身が持っていないズームなので、「入手してみようか?」と大いに誘惑されます。
私自身は<X100F>と、同じ画角を避けて揃えた単焦点を主に使う<X-Pro2>を専ら使い続けています。結局「機材費を使うなら、その資金で旅行して写真を撮る…」という考え方をしてしまいます。
何れにせよ、こちらに掲載の最近の写真は、札幌の「あの辺かな?」が判る画も在り、非常に興味深く、何時も新記事登場を楽しみにしています!!

Charlieさん、いつもコメントありがとうございます!Nikon Zは素晴らしい性能を持った魅力的なカメラシステムだと思うんですけど、値段とデザインがアレなので踏みとどまってます…富士フイルムXはやっぱりかっこいいので

XF18-55mmF2.8-4 R LM OISはいいレンズですよ!ぜひぜひ!でもX100FとX-Pro2×単焦点レンズは最高のラインナップなので要らないかな?

こんにちは。
私もチルト派なので、ようやく手ぶれ補正の付いたX-T4のバリアングル仕様は残念でした。
X-Pro3がまだ使いやすい仕様だったなら、Tシリーズはオールマイティ型だから仕方ないと納得できたのですが、Hidden LCD +十字キー廃止は余りに使用感が……
しかもOVFのファインダー倍率が変更出来なくなり(近い時期に発売されたXF16F2.8に対応していない!)、その理由が「プロの9割以上はEVFで撮影している」と。「それならプロの9割以上は背面液晶と十字キー使っとるわ!」と思わずツッコミたくなってしまいました。

とはいえなんだかんだでフジの値段、大きさ、画質のバランスは、私のような1キロ超える機材を首からかけて動き回りたくない人間には魅力なので、おっしゃられるように原点回帰して欲しいですね。
各機種の次の世代で、最近の方向性の修正を期待します!

X-T4のバリアングル液晶、自撮り派には好評みたいなので、かなり動画(Youtuber?)に寄ったアップデートだと感じてます。そのあたりスチル派の人たちが微妙な気持ちになっている原因じゃないかなという感じがします。もともと動画機として発表されていたX-H1の後継機がバリアングルにならないかが心配です。
X-Pro3は…X-Pro4でもう一度頑張ってください、としか言えないです笑

機材の大きさ・重さに関してはしっかりと方針を見直して欲しいですね!

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